「設計図書等」を軸にした関係者図

制度概説

こんにちは。お世話になっております。

私自身は、いわゆる建築科卒等ではないのですが、営業許可等で必要な図面等をCADで描けると見栄えが良いだろうなということで(手書きで足る1とされているものの)、最近になってCADを学んでいたりします。

今回は、前回の当事者図を、時のフローに載せて配置してみます(クレームの部分除く)。

注文から引き渡しまでを圧縮した図解です。

その際に、私とは異なり、通常、CADをプロとして用いる方々の視座を借りて、軸に据えてみます。

※ 字数があまりに多くなってしまっても読んでいただけないと思い、一旦現段階で公開してみます。条文や図解など、後日に加除訂正するかもしれません。なんらか文面に変化があった場合はご了承ください。

建築士の眼差しを借りた図解

この図は、注文を受けてから、設計を経て、工事完成し、引き渡されるまでの概略図です。

図の最も上に付してある白い右向きの矢印が示すように、3つの期間で成り立っています。

左端の発注者からみると、3当事者とのタイムラインが存在するという見立てです。

当然、設計図がないと、建物は建てようがありませんので、最初の「設計期間」においては、建築士さんたちが図面を引くところから始まる、というイメージで眺めていただければと思います。

設計図面などから成り立つ「設計図書等」2(という法的概念)ができあがると3、行政上の審査(建築確認)を受審すべく、また、施工会社に建築を依頼すべく、矢印が上下に分岐します。

特定行政庁4において、建築主事等による建築確認が済む頃合いで、おのおののタイムラインで、監理業務の受託契約と、工事請負契約とが締結されます。

施工会社が工事を進行するのと並走して、監督・管理(併せて監理)が行われます(水色の矢印)。

行政の方から、中間検査5、完了検査がなされ、完了済検査証が交付されると、晴れて完成建物の引き渡しが法的にも正当化される、といった概略になります。

行政書士はどこに?

実は、行政書士は伝統芸能などでも知られる「黒子」のような存在です。

よく誤解されるのは、「申請行為を代理・代行します」という説明が先輩行政書士たちによっても為されてきたので、建築確認申請もできるのではないか、というものです。

種明かしというのも妙ですが、今回の図解は、その誤解を解くための図解かもしれません。

それは、建築士さんのお仕事の領分なのです。

我々行政書士は、実は、施工会社の皆さんの、建設業を営む前提としての許可証を取得するお手伝い等をさせていただいています。建設業許可申請の代理等ですね。なので、この図解で、参加してくる施工会社さんたちの背後に隠れて見えないのです。

ちなみに、「軽微な建設工事」をする人たちは、許可証を要しません(リンク先の条文の、ただし書きをご参照下さい)。

軽微か否かの判断基準は、金額です😅。

建築一式工事だけ別枠なので、それ以外の工事ですと、1件の請負代金が税込500万円未満の工事。
建築一式工事については、➀1件の請負代金が税込1,500万円未満か、または、②(ここだけ代金不問で、)延べ床面積150㎡未満の木造住宅の工事。

これらのいずれかであれば、許可証がなくとも、建設業を営む者、として活動することができます。

ともあれ、許可をとるという前提行為の代理人ではあり得ても、建てる行為における当事者図には出れないわけです(無理矢理に描きいれることはできますが😅)。

登場人物たちの法的根拠:建築基準法

図解では、3つのフローの上で、当然のように、主体が並んでいます。慣行として見ても、ごく自然な話かもしれません。

ただ、公的な制度の話なので、当然、政策が立法化されており、根拠条文で紹介されても居る人たちです。

今回のお題の視座、特にタイムライン真ん中の軸に出てくる人たちは、建築基準法等の規制を受けています。


設計者(建築基準法第2条第17号

➡ その者の責任において、設計図書を作成した者

 ※ そもそもになるんですが😅、「設計」(建築基準法第2条第10号 ➡ 建築士法第2条第6項)にも条文があります。上のリンク先の条文に同居している文言ですが。


工事監理者(建築基準法第2条第11号

➡ 工事監理建築士法第2項第8項)を行う者

 ※ ちなみに、工事監理契約の受託者になるのは、個人の建築士資格保持者というだけではできないそうです。つまり、この契約の当事者は、発注者と、個人または法人の建築事務所(ぬし)の二者間ということになるようです。

登場人物たちの法的根拠2:建設業法

フローは概略図なので、書き込み過ぎると今回の建築士さんの眼差しを借りるという趣旨に反してしまいます。

なので、フローの下段、施工する人たちのリーディングパーソンについては、ざっとここに引いておきます。


現場代理人(建設業法第19条の2

文言上、場合分けされており、「請負契約の履行に関し工事現場に現場代理人を置く場合においては、」置いても良い役割の人です。

大事な役割ではあるものの、しかし、契約履行にまつわることを、請負人自身が遂行する場合には、置かなくて構わないということになります。

主任技術者、監理技術者(建設業法第26条

両者の為すべきことは同質なのですが、規模感で呼称が分かれる、といえます。

すなわち役割として、工事現場における建設工事の適正実施のため、施工計画作成、工程管理、品質管理その他の技術的な管理。また、当該工事に従事する者の技術的な指導監督。これらを期待されています。

原則として、建設業許可を得た施工会社さんは、前者の主任技術者を置くべきと明文化されています(同条第1項)。元請、下請、請負金額にかかわらずとされています。

例外というか加重要件ですが、発注者から直接請け負った契約の履行のために、つまり手段として締結した下請契約の合計金額が4,500万円以上になるとき6は、特定建設業の許可証の取得と、主任技術者に替えて(代えて)監理技術者を置かねばならないとされています(同条第2項)。

一応のまとめ

呼び水で、CADを学んでいるという近況報告から、建築士さんの眼差しを軸にしたフロー(発注から引き渡しまで)の説明を試みてみました。

その他、各フローの登場人物たちがどんな条文で法的に支えられているかも添えてみました。

舌足らずな面も多々あるかとは存じますが、概略図として楽しんでいただければ幸いです。


  1. 警察消防にとっての避難経路だったり、保健所にとっての衛生管理のために、シンクや家具類、出入り口の配置がわかるものであれば、建築士さんの描くようなミリ単位の精密な図面である必要はない、と解されます。 ↩︎
  2. 建設業法第19条が列挙している第1号にある「工事内容」を具体化したもの、とされています。「等」が束ねているものは、例えば、設計図、仕様書、現場説明書、質問回答などといった一連の書類です。 ↩︎
  3. 実は、工事請負契約書の前にこれらが必要です。設計図書等があることで、積算、見積書等のやりとりを経て全体の額が明確化されていき、契約書も結べるのだ、と位置付けられています。 ↩︎
  4. 略記されていますが、特定行政庁か、民間の指定確認検査機関のいずれかで良いことになっています。前者は、都道府県、または建築主事の居る市区などとされており、他方、後者は、国交相または知事に指定された者を指しています。 ↩︎
  5. 規模によりけりで、省略されることもあります。 ↩︎
  6. 建築一式工事の場合は、7,000万円以上。 ↩︎

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